本記事では、コイルの基本的な巻き方を確認し、空芯コイルの製作図面の描き方を説明します。
「コイルの製作図を描きたいのだけれど、どのように描けばよいのか分からない」という方を対象にしています。
この記事を読むことで、基本的なコイルの図面が描けるようになります。
基本的なコイルの巻き方
図面を描く前に、コイルの基本的な巻き方について見ていきます。
上の動画は、SolidWorkで作成したアニメーションです。
一般的な円形のソレノイドコイルの巻線の様子を示しています。矩形コイルでもボビン巻きコイルでも、薄型コイルでも、基本的な巻き方は同じです。
量産品と試作品で使用する巻線機は異なりますが、今回は試作品の整列巻きについて説明します。
動画は巻き冶具に、1本の連続したマグネットワイヤ(以下線材)を巻線しているアニメーションになります。
作業者は まず最初に、線材の張力Tを任意の値に調整します。その後線材を冶具に固定します(この動画では左の端末線)。この端末線のことを「巻き始め線」と呼んでいます。
次に巻線機を回転させ巻線を行います。この動画では、線材は左から右へと進み、右端で折り返し、次の層へ乗り上げた状態で、右から左へと進んでいます。動画では2層で終了していますが、実際は何十層何百層といった巻線になります。
線材を密着させて整列に巻くには、巻線機の制御だけでは難しく、作業者の手が必要となります。その方法は巻線メーカにより異なり、各社のノウハウとなっています。
また コイルの製作では、コイルが解れないように全体を固める必要があります。固める方法については後の記事で詳しく説明いたします。
この動画で、特に留意して欲しい点は以下の3点となります。
コイルの「長さ方向」と「層方向」
アニメーションの座標軸X方向を「コイルの長さ方向」と呼んでいます。この長さを「コイル厚」と呼ぶ方もいます。
そして、コイルの内周から外周に向かう方向は「コイルの層方向」と言えば通じます。矩形コイルでも薄いコイルでも、空芯コイルでもボビン巻きでも同じ呼び方で通じます。
巻き始め線と、巻き終わり線
先ほども説明しましたが、動画の左側で、冶具と一緒に回転している端末線を「巻き始め線」と呼んでいます。そして、もう一方の上から来ている線を「巻き終わり線」と呼んでいます。この線は巻線終了後に切断することになります。
巻き方向(回転方向)
上の動画の様に、反時計回りの回転方向を「順方向」と呼んでいます。これは作業者の立場に立った呼び方です。動画から分かように、この回転方向の場合、巻き終わり線が常に手前側(作業者側)に来ます。これは整列巻きを行う際、作業がし易い回転方向になります。
これに対して逆方向の回転では、巻き終わり線が、コイルの背面に位置します。その奥には巻線機本体があるため、整列巻きを行う際、巻きにくい回転方向となります。
言葉の説明では判り難いため、逆方向に回転させた際の動画も作りましたので、ご確認下さい。
さて、製作のイメージがつかめたところで、実際に図面を描いてみたいと思います。
図面を描く際に、私が常に留意していることは「製作者の立場に立った図面を描く」ということです。製作者が理解しやすい図面、すなわち作業者がミスを犯し難い図面を描くことを心がけています。
具体的なコイル図面の描き方については、次の記事で説明いたします。